2025年11月23日(日)、三重大学医学部臨床講義棟にて「第1回 地域枠制度フォーラム 〜地域枠制度について考える〜」を開催いたしました。
私たち「のろ志」は、金銭や制度の縛りではなく、愛着や縁、そして「故郷」という基盤を通じて、三重の地域医療をより良くすることを目指して活動しています。
今回のフォーラムは、その第一歩として、当事者である学生や医師、そして制度に関わる方々が一堂に会し、本音で語り合う場となりました。当日の熱気あふれる議論の様子をご報告します。

開催概要
- 日時:2025年11月23日(日) 13:00〜15:30
- 場所:三重大学医学部臨床講義棟 第1講義室
- 参加者:16名(地域枠制度入学者、OB・OG、関係者など)
- ゲスト:三重大学医学部医学系研究科 特務教授 吉山繁幸先生
なぜ今、話し合うのか?
地域枠制度については、「入学者は損をしているのではないか?」「制度の内容が頻繁に変わる」「そもそも誰のための制度なのか?」といった様々な疑問や不安の声が聞かれます。
制度や奨学金の返済義務といった「縛り」だけで医師を地域に留めるのではなく、「地域で働きたい」「この地域に貢献したい」というポジティブな動機で地域医療に関わる未来を作るにはどうすればよいか。
当日は、アイスブレイクで場の空気を温めた後、「なぜ地域枠制度出身者がへき地に行かない、行けなくなってしまうのか」をテーマに、グループワーク形式で徹底的に議論しました。
ディスカッションから見えてきた課題と希望
参加者全員で共有した議論の要点は、大きく分けて以下の3点に集約されました。
1. 情報共有と早期からの意識づけ
現状では地域枠制度が複雑化しており、高校生や大学低学年の段階で、将来のビジョンを描きにくくなっているという指摘がありました。
- 高校生へのアプローチ:高校教員とも連携し、制度の詳細だけでなく、三重県の医療現場のリアルなニーズや魅力を伝える必要がある。
- 実習の拡充:高校生が見学できる病院が限られているため(紀南、一志、南伊勢、県立志摩など)、より広い選択肢を提供してほしいという声も上がりました。
2. 「覚悟」と具体的なキャリアモデル
へき地医療に携わるための「覚悟」は、学生時代や初期研修時の行動(例:内視鏡検査の経験数など)に直結します。 漠然とした不安を払拭するためには、「地域枠だからこそ得られたスキル」という成功体験の可視化が必要です。
- 地域枠だからこそ、全身管理ができる外科医になれた
- 地域枠だからこそ、健診で上部下部カメラができる総合診療医になれた
- 地域枠だからこそ、内科疾患もマネジメントできる整形外科医になれた
こうした具体的なロールモデルを提示し、卒前卒後で一貫したプログラムにしていく重要性が確認されました。
3. 「縦と横のつながり」の強化
孤独感や不安は、キャリア形成の大きな障壁です。
- 相談できる先輩・同級生の存在:診療面でもキャリア面でも気軽に相談できるOB・OGとの強い繋がりを作る。
- メンター機能:先輩がキャリアアップのモデルとなり、後輩を導く循環を作る。


「のろ志」だからこそできること
今回のフォーラムを通じて再確認したのは、大学や県主催の公的な場では、どうしても立場上の調整が必要となり、本音の議論が難しくなるという側面です。
だからこそ、しがらみのない私たち「のろ志」が主催することに意義があります。 制度運営者と当事者が、肩書きを超えてフラットに語り合える場を作ること。それが、お金や制度に縛られず、しかし大学や県とも連携(後援)しながら活動できる私たちの強みです。

まとめと今後の展望
今回の結論として、目指すべき方向性は明確になりました。それは、「義務だから仕方なく」ではなく、「地域枠になりたいと思える制度」にするということです。
縦と横の繋がりをつくる!
今後は縦と横の繋がりを作っていくことを目指し、より密なコミュニケーションと関係構築を図るため、1泊2日の合宿の企画などもしていきたいと考えています。
地域枠制度の当事者と制度運営者が、膝を突き合わせて未来を語り合う。そこから生まれる「縁」こそが、三重の地域医療を支える基盤になると信じています。
ご参加いただいた皆様、熱い議論を本当にありがとうございました。 今後の活動も通じて、また多くの仲間と語り合えることを楽しみにしています!
主催者である松波 山水先生のコラムもぜひご覧ください!

